PICTURE DIARY 2103TH2013
すずも提灯の番組取材と録画。日本テレビBS「檀れい名匠の旅紀行 手わざ恋々和美巡り」という番組。星のアトリエで作品制作の様子とインタビューなど。そう言えば、先日撮影などが終了したNHK WORLDの海外向け番組、「Artisan×Designer」は、ほとんど編集が終了したそうで、ぼくらの台詞やインタビューなどは全て英語の吹き替えになるそうだ。アニメーションの部分もだけど、みたら爆笑か赤面だろうな。両方の番組共にとても楽しみ。
すずも提灯の番組取材と録画。日本テレビBS「檀れい名匠の旅紀行 手わざ恋々和美巡り」という番組。星のアトリエで作品制作の様子とインタビューなど。そう言えば、先日撮影などが終了したNHK WORLDの海外向け番組、「Artisan×Designer」は、ほとんど編集が終了したそうで、ぼくらの台詞やインタビューなどは全て英語の吹き替えになるそうだ。アニメーションの部分もだけど、みたら爆笑か赤面だろうな。両方の番組共にとても楽しみ。
春分の日。昼と夜の長さが等しくなる。よく通る目黒川の辺り、突然に桜が咲いた印象。麹町倶楽部「花咲く春の文化祭」を訪ねる。かの香織さんの参加する会。トイピアノの演奏や人形劇、かのさんのご実家、迫屋酒造の搾りたての日本酒に精進料理の出店などが、蚤の市と共にこじんまりした空間を分け合う。かのさんをはじめとして女性陣は、美しく可愛らしい着物に身を包み、会をエスコートしている。これからのぼくたちが求め、必要とするであろう小さく親密な世界が繰り広げられようとしている。
暖かく春の日。手水鉢の隣で水仙が咲く。桜も一気に満開の気配。急いでいるのか、早く皆を喜ばせたいと思うのか。花あればこそのこの季節。PINK BOX、数種類のデザインの中から二つに絞り、決定する。BEAMS LIGHTS with MIC*ITAYA、B*L*M*の2013-14A/Wメンズのデザインを進める。フラノジャケットとデニム地のパンツ、ベーシック。すずも提灯のカタログパンフレット用原稿を書く。陶器のシリーズをデザインする。まだ企画の段階。どのようなデザインを誰に届けるか。なかなかな難問に思えたが、糸口が見付かった。こうなると速い。
森雪之丞さんに会う。かなりのご無沙汰だったが変わり無く。天使の話などする。90年代に雪之丞さんと作った詩画集「天使」。ネオン看板や内装の絵、食器類に詩と絵の入った横浜中華街のレストラン「天使」。また羽ばたかせたい、など話す。B*L*M*の2羽の鳩をデザインしたエンブレム、ピンで止めていたものを落として無くす。どこかへ飛んで行ったと思える。
森のRASCAL最後の日。今夜40年来の場所で一区切り。連休の前に新しい場所で新しいRASCALが開店すると言う。今夜森へ行きたかったが叶わず。東京からRASCALに、乾杯とご苦労様のご挨拶。その土地の、その場所でなければ生まれない賑わいがある。季節の移ろいや、休むことの無い時の流れを感じて、ぼんやりとした時間を過ごす。そんな無上の喜びと楽しみのある場所。優しい顔、優しい姿の荒くれが憩う、RASCAL。
Dover Street Market Ginzaへ。ロンドンの古い友人、Michael Costiffの出版記念サイン会。亡き奥方Gerlindeとの日々を彼の日記から。「Michael & Gerlinde’s World,Pages From a Day 」と本のタイトル。「覚えているかい?一緒につくばエキスポへ行ったよね、暑くて参ったよねー」とMichael。ぼくらは30年振りに会う。一瞬に30年の月日は霧散して、柔らかな光が二人の間に差す。80年代のロンドンの空気が甦る。一睡の夢のような年月。Michaelの携える空気は変わらず。ただGerlindeが居ないのは寂しい。見えないだけだなと言う気がする。本当に久し振り!二人とも!本にサインを貰い、記念の写真を撮る。何となく本を開くと、ぼくがMichaelを描いたスケッチが載っていた。時間とは不思議なつながりを持つものだ。
関口ベーカリーでコッペパン。ピーナッツバターや小豆マーガリンを塗ってもらっておやつにする。子供の頃、お昼やおやつにコッペパンにジャムやマーガリンを塗ったものが好きだった。近所のパン屋さんに「コッペにジャム付けふたつ!」などとお使いに行った。関口ベーカリーは、そんな懐かしい町のパン屋さんの風情で好きだ。
DAVID BOWIEの10年振りのアルバム「The Next Day」。素直に当たり前なDAVID BOWIEのロック、そしてロックンロールに驚きと嬉しさ。相応しく丁寧な歌に花。
水戸へ。朝から水戸芸術館で撮影。パイプオルガンとSUZUMO CHOCHIN、男爵頭像と婦人頭像のコントラストは名状し難い。建物は磯崎新氏の設計。丸と三角と四角で構成している。午後からは大洗海岸の里海邸金波楼本邸へ。SUZUMO CHOCHINが本当に良く似合う。荒れて向かい風に煽られた白い波頭が、うっすらと差した夕陽に染まり、あくまでも静かな室内のSUZUMO CHOCHINの灯りと同じ色になる。このコントラストは予想も準備も出来ない。自然に寄り添う灯り。自分でデザインしたものでありながら、さらに多くの発見がある。二日間に渡る提灯の撮影、経験を積む。
水戸へ。SUZUMO CHOCHINの撮影。午前中から午後にかけて、昼食を挟んで提灯の制作工程。職人山下さん、濃紺の作務衣も眩しく淡々と。デザイナー横田チーフが手を見せてくださいとお願いすると、差し出された両の手は素晴らしい職人さんの手で、思わず「いい手ですねー。」と感嘆するとすかさず、山下さんが横田さんの手も見せてくださいと言う。差し出すと「なんにもしてない人の手だっぺ」と一蹴。大笑い。偕楽園、好文亭での撮影。夕暮れの亭内は、幽玄の帳に包まれてゆく。漆の床に遊ぶ梅の花びらが、時空間を超えて更に深く遠い現在を暗示するかのよう。
東日本大震災から2年が経つ。もう、まだ。小さなことと思えることでも、日々の生活の中で何が出来るのか考える。ナギちゃんからメールでぼくの多摩美時代の写真が届く。星のアトリエはなぜか笑いの渦。カッコいい写真なんだけどな。ナギちゃんは美大時代のお宝写真を多数秘蔵しているので頼りにしてます。と同時に恐ろしい。星のアトリエ、K女史のバースデー茶会。希望によって和菓子と、昨日マダム・ヨシエさんが差し入れてくださったホワイトショコラケーキ。可愛美味しい。ご馳走さまでした。いくつかの仕事が錯綜して、ゆっくりは出来ないが充実した時間が流れる。
大阪のDMO ARTSへ。TWINKLE FACTORYの第3回目。ジークレープリントのMY FIRST ART作品にその場で筆を加えて完成する。予約のお客様方のご注文は気持ちのこもった真摯なもの、真摯に応える。愛犬への想い、ご子息の結婚に寄せて、お店の開店1周年の贈り物としてなど。今回でTWINKLE FACTORYも一段落。次回の開催は未定だが、また皆に会いたい。DMOスタッフの皆はもとより、谷口氏、藤村氏、宣伝部長の宴氏にはただ感謝あるのみ。タルトメッセ、マダム・ヨシエさんにはクリスマス、バレンタイン、ホワイトデーと、開催がスイーツのかきいれ時と重なるお忙しい最中に毎回来ていただき、本当にありがたかった。心の表れたかたちを見る。有形無形の素晴らしい物事を感じる一日。
よく眠る。よく眠れる。
間違いとか失敗について考える。間違いとか失敗は必ずある。むしろ付き物だ。間違いや失敗に対して、どのような善後策を講じるかで真価が問われるだろう。最もいけないのが誤魔化してしまうこと。そこから得られるものは何も無い。ひとときの満足感のために全てが悲しみに包まれてしまう。失敗は成功のもとと言うように、ほんの少しずつでもプラスになる考え方、行動をとることは出来る。関わる全ての人々が理解出来て納得出来る対処の方法は必ずある。恥を知ること、恥を言わねば理が聞こえぬ。恥ずかしくて隠しておきたい内輪のことも場合によっては話さないと誰にも事情は理解出来ない。少しでも理解出来れば考えが生まれ、納得のゆく治まりが見える。納得のゆく治まりが見えれば、もう間違いとか失敗ではなく、成功への第一歩だ。
末広町のアトリエに保存しているTRAを取りに行く。ドキュメンタリー撮影取材用に必要とのこと。その他に、中学生時代、美大生時代、TRAを出版していた頃の写真も。中学生時代はぼくも反抗期に入って、家族で一緒に出掛けるのを嫌がったり、写真を撮らせなかったりした。中学生時代の写真が少ないのは合点がいくけど、多摩美の頃の写真がほとんど無いのはどういうわけだろう。今まで必要な機会もあまり無かったので気に止めようも無かったが、例によってどこかに仕舞ったまんま忘れているのだろうか。お茶の時間よりも少し遅く、SILENTのS氏とミーティング。PINK BOXのデザインについて。80年代の幻のグループのひとつ。7枚組のセットで出すそうだ。各メンバーの技術、力量は言うに及ばず。PINKと言うバンドには大きなヒットこそなかったが、存在すること自体が奇跡的な輝きを持っていた。奇跡の存在はそれだけでヒット曲以上のものだ。売れる売れないの次元では無くて、時代を合わせ鏡のように映したグループだった。ライブやらないかな。新しいバンドとして見たい。カセット・マガジンTRAの時代のサウンドとビジュアルを象徴するグループのひとつでもあった。
大洗の海を訪れる。子供の頃は、夏になると両親や妹たちと、毎年バスに揺られて海水浴に行った。波が荒く、石が足に当たって痛い海だ。バスは、客席の一番前に座りたくて、いつもハラハラしていた。一番前に座れないと嫌だなあ、と心配で心配で。一番前の席に座って、ぼくの気持ちはバスの運転手さんになる。席から前に乗り出しすぎて「ボク、ごめんよ、バックミラーが見えないから、少し下がってね」。と隣でハンドルを握る本物の運転手さんから注意されること度々だった。気持ちは今も変わらない。
森雪之丞さんより連絡。ホームページがリニューアル出来、メニューページが正午にオープンするとお知らせ。線で描いた薔薇の門の周りを星とハートの紋様の蝶がヒラヒラと舞う。その中心の空間に10編の詩が代わる代わる浮かび上がる。そこはかとなくチャーミングでシンプルな仕上がりとなり美しい。雪之丞さんの独特の言葉は、詩のかたちに振り付けられて心の中を踊る。決して絶望は無く、いつでも心地の良い眠りを約束する、楽園に誘う気怠さと気品がある。それはダンスで踊り疲れたときの汗を拭う一休みや、ゆっくりと喉を潤すカクテルの一杯のように。ほっとするということだが、そのことを良しとはしない。更なるイメージのジャンプを促している。
星のアトリエの皆は張り切って仕事をしている。明日は啓蟄。穴から虫など、冬眠していた土中の生き物が這い出る。何だかそのニュアンスが好きだ。立てたコートの襟から首を伸ばして、風の匂いを嗅ぐ。春の位置を確かめる。
昨年末、開催したTWINKL展で大好評だった展覧会イベント、「TWINKLE FACTORY VOL.3」が3月10日日曜日に開催されます。14時から18時まで、ミック・イタヤが来場しJR大阪三越伊勢丹3階のギャラリーDMO ARTSにて。10種類のプリント作品の中から、あなたがお選びになった絵にミック・イタヤがご希望を伺いその場で加筆し完成します。予約制ですのでご希望の方は以下のホームページをご覧ください。詳しくはDMO ARTSのギャラリースタッフにお尋ねください。
自分たちのやりたいことをするために設立した、我らが株式会社パワー・オブ・ビューティの設立記念日。24年目になった。雛祭りのこの日、思い出深い日。日曜日でもあり、星のアトリエに人の気配は無く、密かに祝う。白梅と紅梅の間に、桃色の山茶花咲く。
天気良し。風やや強く、昨日より寒い。円形の蛍光灯を大小各1本買いに行く。1本は自然色、もう1本は電灯色。この2種類をカクテルしたら丁度良い。自分が発する言葉について考える。そんなつもりは全く無くても人の心に傷を付けることがある。そんなつもりは全く無いのだろうな、と知りながら、驚いたりがっかりするような言い方に出会うこともある。前後の脈絡や表情、空気。それらの印象でそんな訳はないよな、とは思っても、言葉の力と発せられるタイミングの持つ支配力はいかんともしがたいものだ。一呼吸置いて、よくよく考えてから言葉を出す。あるいは呑み込む。そんな風に気を遣うのは難儀な事だが、時に必要なこと。
水戸で隆太郎がこれ読まない?と差し出す本が、濱 嘉之さんの「警視庁情報官ハニートラップ」なので驚いた。「充ちゃんは、こういうの読まないよな」と言いながら。実は、著者の濱さんはぼくの展覧会にたびたび顔を出してくださるし、SUZUMO CHOCHINでもお世話になっている。濱さんと同郷の、博多のおかはちを通じて「テレビにも出とるんよ」と紹介されて知り合い、「危機管理のコンサルタントを仕事にしています」と自己紹介されて、昨年、博多で久し振りにお会いした時に、小説を書いていることも知り、機会があれば読んでみたいとずっと思っていた。その機会が今日やって来た。思いもかけない所から。
ZINEというものではないが、雑誌のような、どう表せば良いか今はまだ解らないけど、綴じた印刷物を作りたいとフツフツと思う。好きだと感じる絵や写真や作文が、素直に並んだ、日常を刷り込んだ紙の層。手触りや匂いの気持ちが良いもの。ページを捲る音が良いもの。味わい深い編集の、編集とは言えないような思慮のあるもの。考えていると楽しくなる。その楽しみを手に取り感じたい。
ミック・イタヤがデザインするBEAMS LIGHTS with MIC*ITAYA、2013年春夏物とミック・イタヤのインタビューがBEAMS社のホームページ、およびウェブ・マガジンOPENERSで紹介されています。ご覧ください。
http://www.beams.co.jp/pickup/detail/1252
http://openers.jp/fashion/news/news_beamslights20130218.html
小栗さんのアートディレクションするお店「REAGE」のオープニング・レセプション。小栗壮介氏とは大分お久し振りになる。会場となる店内では、中西さん、島さん、式田さん、長谷川さんなど、これもまた久し振りの友人知人の面々が元気な顔を揃える。表参道のCHANELやBVLGARIが店を構えるビル。ガラス張りの広く大きな窓が夜景を美しく映す。昼はレストラン、夜はバー・ラウンジと意外にカジュアルなムード。お店のメニューやマネージメントは、小栗さんのご紹介によると、背が高くスタイルも良い美人のモデルさんがなさっている。小栗さんはファッションのデザイナー。コレクションやショーの案内状、広告やテキスタイル・デザインなど、仕事を何シーズンかご一緒させていただいたことがある。現在はタイのバンコクと東京を行ったり来たりだそうだ。ロンドンにも長くいらっしゃった。
DESIGN NEWS-FUKUSKE×moreTrees SOX
品番:2T101 / COL:090
品番:2T107 / COL:000
品番:2T102 / COL:050
品番:2T102 / COL:709
品番:2T103 / COL:050
品番:2T103 / COL:750
品番:2T104 / COL:850
品番:2T104 / COL:090
品番:2T105 / COL:100
品番:2T105 / COL:090
品番:2T106 / COL:450
品番:2T106 / COL:850
品番:2T108 / COL:750
品番:2T108 / COL:700
創業130周年を迎えた福助社と、坂本龍一氏の主宰するmoreTreesの記念チャリティー企画で、ミック・イタヤが8種類の紳士靴下をデザインしました。売上の一部はmoreTreesの植樹活動などに寄付されます。少し大きめかも知れませんが女性の方々もぜひお試しください。
信道三雄/アーティスト、祐真朋樹/スタイリスト、信國太志/ファッション・デザイナー、高橋理子/アーティストの4氏と共に、それぞれが趣向を凝らしたデザインとアブローチで参加しています。
http://fukuske-moretrees.com/
お取り扱い先と展開期間は以下の予定です。
伊勢丹本店 2/末~3/上旬頃より
西武池袋 2月27日より
西武渋谷 2月01日より
そごう千葉店 1月25日より
そごう横浜店 未定
そごう川口店 1月25日より
高島屋東京店 5月29日~6月11日 / フェア
髙島屋横浜店 6月12日~6月18日 / フェア
髙島屋新宿店 5月29日~6月04日 / フェア
JR東海髙島屋 4月03日~4月16日 / フェア
高島屋大阪店 6月12日~6月18日 / フェア
三越本店 1月23日~2月14日 / フェア
三越銀座 3月3日より
有楽町阪急 3月より
東武池袋店 2月末より
松屋銀座本店 2月より
井筒屋本店 3月10日より
お問い合わせはこちらまで
http://www.fukuske.com/contact/
ネコに近付く時にはお尻を向けて、後ろ向きに後退りするように歩くといい、とネコ好きの物知り博士M君が教えてくれる。お尻というのはネコにとっても最も弱点であるので、正面を向いて迫られれば驚いて恐がるネコも、お尻を向けて近付かれると安心するのだと言う。確かにそうかも知れないなと思う。道端でネコにお尻を向けて近付いて行く様子は、可笑しいと思うし平和な空気が見える。それなら例えば、ゴロリと地面に横になってお腹を上に向けて見せたりすると、もっと安心してお腹の上にでも乗って来るかも知れない。しかし、そんな格好になってまで外で行き合うネコと親しくするのも行き過ぎだろう。後ろ向きに近付くのも試してみたいと思うが、やはり人目を気にしない訳には行かない。ネコとの友好も正々堂々としていたい。迂闊に後ろ向きに近付いて、尻に食い付かれでもしたらたまったものではない。まあそんなことも無かろうが。かえって非常にか弱い人間に見えるだけかも知れない。M君も、そう教えてくれながら、自分で試してみたらこうだった、という話も出なかったので本当はどうなのだろう。ただ、助手Aは試してみるかも知れないと思う。わたしはネコに好かれない、と言って威張っていたので。
ESTNATION、4店舗に手鏡の納品。PIANOなどの新作が楽しみ。夜、博多の朋友、岡部八郎の出演するコンサートへ。渋谷にて。おかはちのウクレレと歌と愉快なお喋り。意外にも東京で歌声を披露するのは初めてとのこと。ウクレレの師匠にあたる海田明裕氏の「海田明裕とアイランドウインズ」の定期コンサートへのゲスト出演。同じくゲストに口笛世界一の分山貴美子さん。みんな凄いな。心から温まる暖かいステージ。ウクレレでのジャズやスタンダード・ナンバー、ハワイアン、フラダンス。歌声と拍手を乗せて南洋を航海する。屈託なく楽しい、気のおけない時間を過ごす。外は寒いが、帰路の冷たさが気持ち良いほど。
かなり寒さを感じる。夕刻、恵比寿まで自転車で出たが、風が強く冷たく、体の芯まで、頭の真ん中まで冷たさが染み込んで凍り付くようだ。この季節は少し暖かな日があり、体や気持ちが春の方へ向かい、急な冷え込み、寒さに対して油断があるのか、余計にこたえる。耳は千切れようとする、鼻はもげようとする。何のその、まだまだ冬の真っ只中。星のアトリエの小さな庭の白梅、紅梅も膨らんで一つ二つ咲き始めた。早春のしるし。
休養日。終日ピアノやシンフォニーのCDなどを聴いて過ごす。ハーモニー・コリンの新作「スプリング・ブレイカーズ」の試写会の案内が来る。机上の薔薇がそろそろ萎れてきた。2才の頃、火鉢にぶつけて目の上を切ったとき、〇〇の歌を歌ってくれたら泣かない、と母に言ったのだそうだが、それは何と言う歌だったのだろうか。
星のアトリエでTV番組のロケーション。13時から18時頃まで。プロフィール・カットやインタビューなど。作品制作風景のシーンでは、即興的に思い浮かんだものを夢中で描くのだが、その場の空気で誰のものでもない絵になり面白い。ぐるぐるガリガリと勝手に手が動いて軽薄なところがなおよい。描こうと思い、描けるものではない絵。出来不出来の範疇に無い絵。カメラのレンズという単眼が何万何十万何百万何千万もの視聴者の眼につながる絵。
星のアトリエの吹き抜けの部屋に2011年の作品「天使のはね」を飾る。500×1000mmのキャンバスにアクリル絵具で描いた中程度の大きさのものだが、壁面に充分な余裕が無いので少し窮屈かも知れない。しかし、自由に飛べないと言うことは無い。この絵は、ぼくにとって書のようなものであり、描く時の、筆を動かす一時にこの世の全てをあらわすようなもの。
PIPPALAで髪を整える。整えてもらいながら内田さんと三崎のバールとドーナツ屋さんの話。昔からの商店街。そのドーナツ屋さんの2階でY.Cさんのコンサートがあり、訪れると、お客さんにぼくとそっくりの人がいて、あれ?ミックさん?と、もう少しで声をかけそうになったという話。多分、岩崎さんでしょ。その通りだった。雰囲気が同じような二人。カモメ児童合唱団の曲が面白い。三崎のバールとドーナツ屋さんとカモメ児童合唱団のCDは、何年か前に彼の地に移り住んだFさんの仕事。夜、銀座の王子ホール。フランチェスコ・トリスターノのピアノ・コンサート。これはまさに旅の音楽。ブクステフーデからバッハへ。バッハがブクステフーデを訪ねた旅、そしてトリスターノがバッハを、さらにブクステフーデを訪ねる長大な新しい旅。「バッハのゴルトベルク」にブクステフーデの「ラ・カプリチョーザ」が影響を与えたように。
空寒く風冷たい。昼雪舞いちらつくが、積もること無くただ濡らす。夕刻、神田淡路町の老舗、「かんだやぶそば」から出火、建物焼く。築90年余の数寄屋、おそらくは大半を焼失したであろう。怪我人の無く不幸中の幸いと言うべき。今日の今日で気の早くはあるが、早々の復活を待つ。折に触れて訪れる店の風情と居心地の良さは、格別に好きな処だ。
甘いものに縁のある日。神田淡路町近江屋のイチゴのクリームケーキをホールで。続いて浅草徳太楼のキンツバ。まず、吟味された大粒のイチゴ。スポンジとスポンジの間に、ごろりどっかりと生クリームに埋まって挟まる様子は、可憐とは言いがたく、お転婆な風情。下手な取り分け方をするとピースがイチゴの重みで倒れてしまう。目の前からお口の中に、あっという間に消えて行く。手品か何かのように。口直しなどはせずに即キンツバ。こちらさりげない上等。
新しいことが始まるとき、季節が変わろうとするとき、古いものは豊かな土壌となる。
ライトアップする直前の歌舞伎座の前を通る。晴海通りを挟んで道の反対側には大勢の人々が三脚を立て、それぞれにカメラを構えてその瞬間を今や遅しと待ちわびている風。通り過ぎる。風はことのほか冷たい。天頂付近に三日月が煌々と笑う。街の景色の輪郭がさえざえとして、触れると痛そうだ。
ロシアに大きな隕石が落下して、多くの人々が負傷した、とのニュースがある。現地時間午前9時20分、日本時間12時20分。映像を見ると、爆発して目も眩む巨大な光球となり、青空に太い煙の尾を引いて横断し、大きな爆発音もたてている。報道では直径10メートルと言われているが、こういった特殊な出来事の場合、大体最初は控え目な発表がなされて、人々の興味が薄れるのに反比例するように、とんでもなく大きく、新たな事実が分かるものだ。隕石の落下によって人々に怪我などの被害が出るのは稀だと言うが、大気圏への突入の角度や隕石の大きさなどが、結果に大きな違いをもたらすのだろう。子供の頃、自宅の庭で夕方の空を見上げていたら、西の空の彼方から東の空の果てまで、煙の軌跡を残しながら巨大な火の玉が横切るのを見たことがある。夢か幻のように唖然と見送った。次の日、学校で話題になるかと思ったがそんな話を持ち出す友達はいなかったので、火の玉を見たことは黙っていた。毎日たくさんの隕石が地球に降り注いでいる。ほとんどは大気にぶつかって燃え尽き、流れ星になる。太古から毎日毎日。
ルービンシュタインのマズルカ全曲集、51のどの曲を取り上げてみても素晴らしく美しい。ショパンのマズルカの譜面自体が一音の隙もなく選ばれ、考え抜かれた、一切の無駄がない、整然とした美をたたえた音符で構成されたものであるに違いない。ぼくは譜面を読んだり、ピアノを弾く者ではないが、少しだけでも感じることは出来る。ルービンシュタインのマズルカには、ポーランド人がマズルカを踊る様子や心持ちの誇らしく楽しげな有り様が、深く推考されて息づいている。ショパンとルービンシュタイン、同じ祖国を持つ者同志のつながりについて想いを巡らす。極力飾りのない簡素な華麗。それとは俄に気付かない深くさりげない解釈。マズルカを踊るポーランドの人々の姿形や床を踏む足音、鼓動を感じ、想像しながら一日中繰り返して聴く。
音楽の月刊誌「C」の編集長、N氏に20年振りにお会いする。20年以上前、2年間同誌の表紙に絵を描かせていただき、ロゴのデザインもさせていただいた。その当時、クラシック音楽に見向きもしないぼくの絵を使ってくださった。今頃になって、そのご恩が思い出されて忘れ難く、思い切って連絡を取ったところ、お会いいただけることになった。此処のぼくは、やっとクラシック音楽の絶対的な力の強さ、面白さに目覚めて、N氏に感謝の気持ちを伝えたいと思った。しかし何よりも再びお会い出来たことに感謝をしたい。突然に再び現れたぼくを変わらず迎えてくださって、変わらず送り出してくださる。N氏をはじめ、奥様やお嬢様のそんな自然なところに。
物事がすんなりと思うようには運ばない日。こんな日はじっとしているのが良いが、そうも行かず。出来るだけなだらかに、平らになるように過ごす。
建国記念日。紀元節。神武天皇が即位した日として定められた。旧暦では1月29日。大分草臥れた。眠る、眠る、眠る。たくさんの色々な夢を見る。
大阪のDMO ARTSへ。続TWINKLE FACTORY。予約の来場者の注文にその場で絵を描く。相応しいことを相応しいところで。東京の星のアトリエには助手Aに出ていてもらい、大阪での催しを締めた。それぞれは離れた場所に居るわけだが、行うことの意志や意識に注意を払い、それぞれに実感することはとても大切だ。務めを果す。DMO谷口氏の「実演販売ですよー!」の呼び込みには参った。新幹線の車窓から富士を仰ぐ。旧正月。
OBANDOS、そろそろ何かやらないかな。工作展、そろそろ何かやらないかな。決め事が極端に少ないのが特徴の集りなのでのんびりとしている。働きかける、世話をやくというより、皆の何物かが熟するのを待つ。しかし、熟するべきモノとは何物か、それは例えばどの様なモノか。熟するべきは実であるのか、はたまた術なのか、機はどの様に熟すのか。子供の遊びのような、幻のようなリアリティー。待つようなものでもない。
待ち合わせの間に時間があるので書店に入った。先日から気になり、探している本があるので、何となく見付かるかなと思い。探しているとは言え、その本の題名も著者もまだ知らない。書店で未知の知人に偶然出会うことがあるかと言うような。計画的ではなく、色々と調べ挙げてああするこうすると段取りすることではない。店内を歩いて行くと、通路の脇の書棚に沿った小さなテーブルの上にLed Zeppelinの2007年再結成ライブアルバムと関連図書がディスプレイしてある。その同じテーブルの隣にはNeil Youngの自伝2巻と最新の2枚組アルバムが、やはり綺麗にディスプレイしてある。それぞれのアルバムをカゴに入れて、探しているはずの本の分野の売場に行き、目当てとなる関連の図書を数冊見て、はたと思いLed ZeppelinとNeil YoungのCDアルバムを通路の元の場所に戻して、これだと思う本を1冊求めて店を出る。あぶない、あぶない。気持ちを自由にしておくと、簡単に予定以外の世界へ踏み込んで行ってしまう。それが良いことも多々あるが。
車を運転しながら、sadeの2001年アメリカツアーのライブアルバムを聴く。今まで不思議とこの「lovers live」を聴いていなかった。sadeが初来日した時、公演のポスターやパンフレットをデザインした。相応しく気に入った写真はソフトな甘いフォーカスで、sadeの個性を充分に現している。白いシャツと黒のゆったりとしたパンツ姿のsadeに初めて会ったとき、その活きた瞳の奥深さと眼の形に驚いて言葉がなかった。忘れられない瞳だ。くちびると瞳が同じ性質の女性。sadeの新しいライブアルバムが昨年リリースされている。そこにも全てを映す瞳が歌う音楽が記録されているのだろう。
雪という雪にはならず。午前中の昼近くに、ほんのうっすらと白くなったようすが奥ゆかしい。少しでも雪の降る日は、辺りの邪気が吸い取られて無邪気な心持ちになる。静かであり、あらゆることに対して、心動かされやすく、同時に無頓着でもある。能動的というよりは、受動的な状態である。深く静かに力を集めて、漂うような空中の美。
今日改めて気が付いたが、大体仕事は、嫌いなものや厭だと思うものはしないようにしているので、仕事の上で怒ったり憎んだり悲しんだりと、ネガティブな感情を持つことはほとんどない。もしあれば止める。それにしても、SUZUMO CHOCHINの仕事には、ネガティブな要素が極力ない。見当たらない。笑ったり、びっくりしたりしながら仕事をして来た。これはずっと続く。明日は早朝から一日雪の予報が出ているので、朝起きると銀世界になっているのだろうか。子供の頃からの楽しみだ。今日は、夕刻から空や大気が鎮まって、これから始まることに備えている風。静かに、静かに。