PICTURE DIARY 2009TH2012


歌舞伎の世界の話で、誰の話であったか定かではなくなってしまったが、老境の、女形を極めた大役者が、今は盛りの当代切っての人気役者に言った言葉。「歳を重ねて芝居はだんだん上手くならない。むしろ下手になって行くものだ」と。精進を重ねて研鑽を積み、練磨すればするほど、自ずと芸は磨かれるものと思っていたが、かような努力を持ってしてもそうではなく、ただ下手になって行く。表現の世界全般に当てはまる警句として聞いた。経験を重ねて、色々なことを学ぶ。その時その場に応じた変化の仕様、有様を知る。精神、技術、体力はいつも同じバランスではない。バランスの取り方やアンバランスの極め方も同じように学ぶ。ある高みや頂点を目指そうがそうでなかろうが、最善、最良を求め、緊張と弛緩の出入りを自在にする。下手な自分を知り、諦めることのない。

Leave a Reply