PICTURE DIARY 0211FR2012


マウリツィオ・ポリーニ、ポリーニ・パースペクティヴ2012、サントリーホールでのプログラム。ベートーヴェンとシュトックハウゼンを聴く。シュトックハウゼンのピアノ曲はまるで森羅万象を凝縮したような、自然の景色や出来事をデフォルメしたような清々しいもので、メシアンに師事していたのだと言うのもうなづける。ポリーニの演奏は、聴いていてこんなにも緊張するコンサートも珍しいほど。譜面めくりの紙の音がホールにこだまし、さらに、譜面めくりのタイミングが合わないらしい様子。客席で体が硬直し大理石の彫像になったような気持ちになる。ピアノの音に削り出されるような感覚だ。一転してベートーヴェンのピアノソナタでは熟達し切ったピアノをさらりと聴かせてくれる。あまりにもさらりとしているために、そしてシュトックハウゼンとの強いコントラストのためにか、急激に眠くなるが、それは良いサインだ。ポリーニのベートーヴェンは非の打ち所なく後になって効いて来る性質のものだ。もちろんのことだがCDなどで聴き馴染みのある音とは違い、そこには静かで美しく激しさを秘めた生き物が、おとなしい振りをして、小さく低く、唸り声を圧し殺したように、知らぬ顔をして獲物を狙っている。ぼくは時を隔てた革命の音を聴いたのかも知れない。獲物が仕留められたことを知るのは革命の騒ぎの後。全く対照的なシュトックハウゼンとベートーヴェンに、安全とは言えない目論見を聴く極上の一夜だった。プログラムは以下に。
シュトックハウゼン:ピアノ曲7、ピアノ曲9。ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第24番嬰へ長調op.78「テレーゼ」、ピアノ・ソナタ第25番ト長調op.79。休憩。ピアノ・ソナタ第26番変ホ長調op.81a「告別」、ピアノ・ソナタ第27番ホ短調op.90。アンコール。ベートーヴェン:6つのバガテルより、変ホ長調op.126-3、ロ短調op.126-4。以上。

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