PICTURE DIARY 0206MO2014
夜、旧友たちと晩餐。中華の円卓を囲んで面白可笑しく今昔の話題。もっぱら聞き役、笑い役。年に一度か二度の機会だが、大好きな仲間たちとの短いが充実したひととき。冗談や大真面目が心地好く振る舞われて食卓上を廻り皿に盛られる。
夜、旧友たちと晩餐。中華の円卓を囲んで面白可笑しく今昔の話題。もっぱら聞き役、笑い役。年に一度か二度の機会だが、大好きな仲間たちとの短いが充実したひととき。冗談や大真面目が心地好く振る舞われて食卓上を廻り皿に盛られる。
BEAMS LIGHTS with MIC*ITAYA
2014 SS COLLECTION
MENS DOVE T-SHIRT
COTTON 100%
SIZE S M L XL
COLOUR WHITE×LIGHT BLUE
51-04-0125-012
PRICE ¥10,260
MADE IN JAPAN
http://shop.beams.co.jp/shop/lightsm/goods.html?gid=3414754
WOMENS DOVE 3WAY ONEPIECE
COTTON 50%
RAYON 50%
SIZE FREE
COLOUR WHITE×LIGHT BLUE
52-26-0518-012
PRICE ¥16,200
MADE IN JAPAN
http://shop.beams.co.jp/shop/lightsw/goods.html?did=12314010
Coolie’s Creekの「天使アラカルト」搬出。6ヶ月にも及ぶ長期間の展覧会の終了。多くの方々に見ていただけて有り難く思う。ケンさん、キュレーターのミミさん、オーナー、イッサクさんに喜んでいただけたのが嬉しい。
清志郎さんの絵を2枚描く。ソウルとブルースにちなんだ「赤い清志郎」、「青い清志郎」。建築用の合板にアクリル絵具とペンキを使用して素早く。
夕暮れのテラス席に座って人を眺める。足早に通り過ぎる人、お喋りに夢中な様子でゆっくりと歩く女性たち、何か言い合っては笑ったりじゃれたりして、揉み合うように元気な学生たち、スマートフォンの明かりを顔に受けて拝むように歩く男や女、手をつなぎ、前を向きながら見つめ合うことのない微笑みのカップル、背の高いお母さんの隣で同じ歩幅で歩こうと大股になり過ぎた少女、ダックスを散歩させる短パン白髪のダックスなミドル、昼間の熱気をビールと一緒に流して一息入れる人たち、目の前を通り過ぎる人々を眺めていると、確かに川の流れに似て、むしろこの小さく見える流れに漕ぎ出すには船頭が要るかも知れない。ミルクティーを楽しんで川岸を行き橋を渡り帰る。
星のアトリエに、朝から庭師さんたちが入る。今年は各地でアブラムシが大発生しているそうだ。半日かかって清々しく整えてくれる。お茶と、お茶菓子にはどら焼とあられを用意する。どら焼もあられも個包装の品を用意して、持ち帰りに便利なように。庭師さんたちが帰って、アトリエのお茶の時間。取っておいたどら焼とあられをいただく。ほうじ茶を飲みながら、それぞれを食べ、個包装のビニールを畳んで結ぶ。いつも何となくしてしまう癖だ。出来るだけゴミが出ないのが理想だが、ゴミとなったものの行く末を整える。
高架下に突然のように大きなコーヒーのチェーン店が出来ていて驚いた。建物が無くなるのも早ければ、出来るのも素早い。建物を作ると、壊すのにも同じ位のコストを用する場合があるとも聞く。スクラップアンドビルド、ビルドアンドスクラップ。スクラップのようなものを建てないように。
午前中から打ち合わせと展示会などに出る。旧友と昼食。ストーンズのコンサート、東京公演を3日とも行ったと言うが、流石は根っからのロック野郎の面目躍如。夜、別の旧友夫妻とクーリーズクリークで夕食。何を食べても美味しく楽しい、笑顔になる。ロングランを続けて半年近くになる展覧会「天使アラカルト」もいよいよ31日土曜日まで。名残を惜しみながら作品の展覧を見る。
BEAMS LIGHTS with MIC*ITAYA
2014 SS COLLECTION
DOUBLE DOVE SHIRT
COTTON 100%
SIZE S M L
COLOUR GLAY
51-11-0320-901
PRICE ¥23,760
MADE IN JAPAN
http://shop.beams.co.jp/shop/lightsm/goods.html?gid=3310884
DOVE TIE
SILK 100%
COLOUR GLAY NAVY SAXEBLUE RED
51-44-0021-901
PRICE ¥11,880
MADE IN JAPAN
http://shop.beams.co.jp/shop/lightsm/goods.html?gid=3310888&pl_on=4
上を見上げたら切りがないと言う。だからと言って下ばかりを見て生きるのは面白くない。真っ直ぐ前を向いて日々を重ねる。チャンスはいつも視界の外、例えば後ろから来る。
チャンピオンズリーグ、レアルが優勝する。アトレティコは監督シメオネのキャラクターを現した素晴らしいチーム。しかし経験の差、あらゆることを勝利に結び付ける力、アンチェロッティのチームが上回っていた。もうすぐワールドカップが始まる。えっ、いつからだっけ、などと今はぼんやりしているが、始まるときっと夢中になる。
夜になって散歩する。寒くなく暑くなく。テーマを持ち歩いてみようと、路面と足裏の関係、地面を蹴る足の指に神経を集中するのだが、最初のうちだけで途中から忘れ、いつものように歩き続ける。
BLM-WOMENS DUNGAREE JACKET, SHORT PANTS, DOUBLE DOVE BLOUSE
BEAMS LIGHTS with MIC*ITAYA
2014 SS COLLECTION
DUNGAREE JACKET
COTTON 100%
SIZE 36 38 40
COLOUR SAXE BLUE
52-16-0033-012
PRICE ¥19,440
MADE IN JAPAN
http://shop.beams.co.jp/shop/lightsw/goods.html?gid=3411669
DUNGAREE SHORT PANTS
OUTSIDE
COTTON 100%
INSIDE
POLYESTER 100%
SIZE 36 38
COLOUR SAXE BLUE
52-25-0028-012
PRICE ¥15,120
MADE IN JAPAN
http://shop.beams.co.jp/shop/lightsw/goods.html?gid=3411673
DOUBLE DOVE FRILL SLEEVE BLOUSE
MAIN PART
COTTON 100%
ANOTHER CLOTH
POLYESTER 100%
SIZE 36 38
COLOUR WHITE
52-01-0143-012
PRICE ¥15,120
MADE IN JAPAN
http://shop.beams.co.jp/shop/lightsw/goods.html?gid=3411664
五月の今頃、自然界の水の流れが変わる。体内でも。
東京地方に竜巻警報が出る。終日、晴れ間に時折激しい雷雨が見舞う一日。実際に竜巻が発生したかどうかは不明だが、不安定な気象状況。丁度昼頃の外出の時刻と重なったので、ビルの間に間に見える黒く暗い空に注意を向けながら動く。
BEAMS LIGHTS with MIC*ITAYA
2014 SS COLLECTION
CHAMBRAY JACKET
COTTON 100%
SIZE S M L
COLOUR GLAY
51-16-0083-901
PRICE ¥50,760
MADE IN JAPAN
http://shop.beams.co.jp/shop/lightsm/goods.html?gid=3310885
CHAMBRAY 5 POCKET PANTS
COTTON 100%
SIZE S M L
COLOUR GLAY
51-21-0018-901
PRICE ¥24,840
MADE IN JAPAN
http://shop.beams.co.jp/shop/lightsm/goods.html?gid=3310886
原宿で午前中からミーティング。雨なので車。昨夜OBANDOSを観に来てくれた友人と昼食をと思って電話したが、生憎仕事が終わらない。そこで一人、久しくご無沙汰の店を目指したが途中、ひょっとしたら休みかもと思いながら、帰り道だし行ってみようと行ったらやっぱり休み。今日はお昼に嫌われたかなと思ったら、車の燃料計が0。すぐに給油のサインが出た。みんな腹ペコ。
OBANDOS、渋谷、SARAVAH東京でのライブ。昔馴染みの友人や知人も駆け付けて和やか、賑やか。その日その時の即興演奏なのだが、メンバーの精神的、肉体的コンディションと観客との接点が内容を決める。演奏の善し悪しよりも楽しく嬉しい一時だったかどうか。満足感いっばい。
月曜日は一週間のスタート、ミーティングの日でもある。今週の予定など確認する。OBANDOSのライブなど外出が多い。気持ちも前のめりになりがち。ドウドウドウと手綱を引き絞り、ギャロップ。走り出したい心をいさめる。この馬は無闇に走りたがる。野性を大事にしながら、理性が語りかける。
午後、海へ行く。自然の中に身を置くことは、短時間であっても得るものが大きい。
ウィークデーでは足りない分、ゆっくり眠り、休む。しかし、休みの日にやろうと思うことがたくさんあって、思い出すと休みにならない。そこで、思い出さないようにした。さらに、思わないようにした。日々の中で自然に解決するように。自分に必要なことは、いずれにせよ自ずからやって来て、成すべき時に成される。心から求め愛することであるならば。
車を定期点検に出すので、代車に国産のワンボックスカーが来た。大き過ぎてアトリエの車庫に入らないかと思ったが、ミラーを畳んで門柱の間を通れば余裕があった。車内を見ると見事なリビングルーム。国産車はどこか駕籠の風情。運転を任せてくつろげれば、長距離は楽だろうな。
昼食が2時から3時の間になることがある。今日も2時半過ぎになって行き付けの蕎麦屋へ行った。せいろを注文して食べ終わると3時5分前。昼は3時までのお店なので、まあ丁度良く最後の客になり、ご主人と世間話を少しする。先日、3時少し前に飛び込んで来た客は、「まだ大丈夫ですか」と声を掛けるのは良いが、品書きを見て、冷やを一本つけて、はらみとなにとなに、複数のつまみを矢継ぎ早に注文し、あと「ざるね!」。着ていた迷彩の上着を脱ぐと持っていた鞄から文庫本を取り出して読み始めた。閉店間際にちょっとごめんなさいじゃなかった。だけど短時間にたくさんの注文で、良い客かも知れない。
毎年この季節になると住宅街を散歩するのが楽しい。小さな家の小さな庭、大きなお屋敷の大きな庭、アパートのバルコニーやテラス、いろんなところからいろんな花や木々の香りがして、急ぎ足もついついゆっくりになる。風が吹くごとに、散歩道の角を曲がるごとに、違った香りが漂って来る。街中の、そんな微かな自然の匂い。辿って行くと世話する人と過ぎ行く時、廻る季節が佇んでいる。小さく会釈する、雨の頃までの気持ちの良い緑と草花と見えない人々。
池袋西口まで自転車で。ゆっくり走って片道たっぷり1時間。彼の地は空気も人も全てが違う。12ポケッツジャケットは、やはり便利。両手を開けて打ち合わせに向かえる。ポケットはパンパンだけど、実用の必然性があってそれが格好いいと思う。池袋で二つの用事を済ませ星のアトリエに帰還。
星のアトリエの手水鉢は円い鏡だ。木々や草花、手や顔を、空を雲を、光を写す。鏡は龍が守っているので、手水には龍が降りて来る。手水の水は毎日取り換えて、鉢の内側は柔らかな布で丁寧に拭いておく。水を充たして清らかに保つ。棲む家やアトリエに手水や井戸があるのは偶然ではない。水は鏡。
叩く。ドラムを叩く。ゆっくりと歩くようなリズム。ドタンバタンと手数も少なくして、おかずも入れずに続ける。もともとあまりに速いものは好きではないし、苦手でもある。正直言えば下手なので自分が気持ち良いように叩く。叩くのは楽しい。叩いて音が鳴るのが嬉しい。正確な一定のリズムではなく、早くなったり遅くなったりするのが人間的だ。正直言えば下手なので。軽く叩いたり強く叩いたり1時間たっぷり叩く、叩く、叩く。そのままのリズムとテンポで夕暮れを歩く。ポケットにスティック、くちびるにメロディ、金木犀の風、弓張月の伴奏。
土曜日は休養日、よく眠り、体も心も休める。仕事の上で、人を育てるとはどういうことかなとぼんやり考える。特別人を育てようと考えたことはない。よいところもわるいところも自分が手本になればと思って来た。自分の価値観に基づく考えや行為を現し、それを感じた各々が判断するように。あれだめこれだめではなくて、自由な楽しみの中で各々の糧となっていけるように。だけど、言うは易し。そのことは、ある程度の柔らかさがある資質や年齢での導きでなければ遅いとも思う。気が付いた時が始める時。それもこれも自身の固定観念を解いてほぐすことから。生まれてから今まで、脳の半分以上を使わずにいると感じる。
午後にわか雨。ジャンパーを頭にかざして歩く。雨宿りすればよいのだけれど、大粒の雨ではあるがそれほど激しくはなく、リズムに乗って歩いていると止まりたくなかった。勝ち負けではないのに、雨宿りして止まると何だか何かに負けたような気になるかと思い。今日は傘も持たず雨の中を歩くのが楽しい。春の花や木の芽の香りと、夏の夕立の土臭い埃の匂いがする。気に入りの店のベーグルがひとつだけ入った袋を提げて、急ぎ足で行く。男はいつでもいくつになっても、どうでもよいようなことに負けたくないと思うものだと、少し呆れる。
以前住んだ家の大家さんに会いに行く。近況など話す。時と共に辺りの環境も少しずつ変化して、大きなお屋敷も小分けされたり、集合住宅に変わったりしていると聞く。確かに悠々とした空気はお世話になった頃と趣を異にしているが、住んだ家や庭は変わらずに静かに佇んでいて安らいだ。自然界から人が借りてお邪魔する土地での営み、敬意と親しみを持って過ごすべしと感じ、頭を下げる。
ゴールデンウィーク開け。アトリエのスタッフも皆それぞれに楽しんだようだ。今週は今年の19週目、毎週1作品も19作目になる。とは言え、一度に何作品か同時、または連続して取りかかり、仕上げることが多いので2作品仕上がる週もあれば作品0の週もある。自分自身の意識、記憶の底の方に沈殿したものではなく、水面上に浮かんだ上澄みをすくい上げる。
お天気は良かったけれど気温が低い一日。ネコたちが合宿から戻る。
CD ALBUM
ARTIST : KIDO NATSUKI
TITLE : MY BACK PAGES
ART DIRECTION & ILLUSTRATION : MIC*ITAYA / MIC*ITAYA DESIGN INSPIRATIONAL
GRAPHIC DESIGN : NORIYUKI YOKOTA / POB DESIGN
INNER PHOTO : TAKEO OGISO
CLIENT : SILENT,INC.
RELEASE DATE : 23RD APR 2014
ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2014。今日も一日。小雨模様。ベレゾフスキーのピアノ、チャイコフスキーピアノ協奏曲第1番。同じくベレゾフスキーのピアノと弦楽四重奏、シューベルト「ます」。これらの音楽の世界の中にしばらく住みたいと望む。音楽の美による悦楽や快感は大いなる眠りを伴う。睡眠の眠りとは異なる、催眠の意志とも異なる浄化作用。細胞のひとつひとつが生き生きと息づき、日々のストレスよさようなら。
ラ・フォル・ジュルネ・ジャポン、東京国際フォーラム、第10回記念。午前中から3つ見る。ショパン、ドボルザーク、モーツァルト。モーツァルトのレクイエム、コルボさんの指揮。天上の歌声と演奏に、心地好く眠ってしまう。起きていられるわけがない。良い天気にも恵まれて素敵な一日。
自分の中に常識的な部分や非常識的な部分を見つけて愕然とする。誰しも二面性を持つだろうし、そのことは何も特別なことではない。それらのバランスこそが大事で、個性につながる。物事を深く考えれば良いものではなく、まるで考えなければ良いものでもない。溌剌とぼんやりする。普段はぼんやりしているのに溌剌と行動している。常識の中で生きていくのは難しい。非常識に生きるのはもっと難しい。中庸が好きでも上手でもなく、ことさら平凡が美しい。日本国憲法67歳の記念日。
技術と見識のある人の手を経て作るものは、それに相応しい佇まいと価値を得る。誇りを待って制作にあたり、自信を待って世に送り出す。その価値を認め、望む人に届くよう配慮する。それぞれが積み重ねた時や人生が生き生きと息づくように磨き上げ、そのものによって、より楽しく快適に過ごせるように世に送り出す。本当の本物の価値について、多くの言葉はいらない。完全なものを求めて作り、使い、改良する。そのことを知り、大切に思う者が仲間と言える。
まあ、大変な一日だった。もうすぐパーキングエリア、昼休憩を入れようかという高速道路の長い橋の上で右前輪がバースト。激しく振動する車をなだめつつ、追い越し車線から後続車に注意して路肩に停車。すぐに救援を要請して50分程、ハザード、ヘッドライト、ブレーキランプも時々踏んでミラーを常に確認しながら後続車に注意を促す。出来れば助手席から車外に出てガードレールを乗り越え、安全な所に退避したいのだがガードレールの向こうは川。レッカー車が到着し、パーキングエリアまで移動して車載のスペアタイヤに交換しひと安心。思わぬトラブルで予定時間をだいぶオーバーし、各方面へ連絡を入れながら一般道へ。目にしみる一面緑の田園風景の中、行く手上空の黒雲が怪しい感じだなと思いながら、30分程走ったところで車の右前方でプシューッという音。まさか!と思ったがそのまさか。田舎の片側一車線、幸いガードレールの向こう側に平行して農道が走っていたので、ガードレールの切れ目から進入し停車。スペアタイヤはペチャンコ。辺りを見ると遥か前方にガソリンスタンドの看板らしきが見えるので、農道をゆっくりと走り、なんとかたどり着く。運良くタイヤなどの点検設備とガレージがあったので、スタンドの店員さんに、まずはエアを入れてもらおうとスペアタイヤ見ると、空気を入れるバルブの側面が裂けている。スタンドにはバルブもタイヤもストックは無く、どうにもならないので、スタンドのマネージャーに近所の自動車修理工場を紹介してもらう。ガレージに車を入れて待つ間、にわかに激しい雷と豪雨。20分程で上がると鮮やかな2本の虹がかかった。端から端までアーチが見える虹を久し振りに見た。修理工場のレッカー車で移動。工場に着くと、にこやかなオーナーご夫妻と、これまた久し振りに見た眉毛を描かれた白い犬にワンワンと迎えられてお茶をいただく。幸い中古で車に合うタイヤがあったので交換してもらい、予定より3時間遅れて目的地に到着する。不運と運、人情を知る得難い一日。
雨が降ったり止んだり、そして時々強く降る。傘をさして散歩するが、そんな時に限り雨は小降りになりぴたりと止む。傘を畳んで少し余計に歩く。廻る季節に通じる道、軽やかに踏みしめて行く。
天照雲上祝日。スコーンにクロデットクリームそしてジャム、キュウリのサンドイッチ、ティーのアフタヌーン楽し。昨日の仕事を見返して不備を発見する。良いと思う仕事ほど時間を置くと気付くことがあり、そのお陰で完璧に近付く。許す限り時間を置く。迷うことがあれば出来るだけ放っておく。迷う時には動かない。
花の季節だ。アトリエの小さな庭にも花が咲く。花の傍らの手水は、鳥たちのおあつらえ向きな浴場で、午後の陽の高い時間になると、鳥たちが次から次へとタオルと石鹸を小さな洗面器に入れてやって来る。近くの梅の木に行儀良く止まってピーピーと啼きながら順番を待って入る。それにしても、手水鉢は鳥たちの水浴びに丁度良い大きさと形をしている。水浴びする鳥たちを眺めるのが好きだ。警戒しながら安心もしている。新しい水に取り換えておくと、嬉しいのかすぐにやって来てピーピー言う。頭のてっぺんから水風呂に飛び込んで、喜びを表す。お行儀良くね、とは言わない。思う存分にね。
海に行く。毛布を敷いて寝転がる。瞳を閉じると、太陽の暖かさと吹く風の冷たさが不規則なリズムで肌を撫でるのを感じる。気持ち良い。遠く近く、あるいは歩きながらの人の話し声、波打ち際に寄って来た小さなヨットの帆がたてる風音、高い所を旋回するトンビの啼く声、はしゃぐ子供たち、犬たち、ジリジリするにはまだ季節が早い太陽の下で、みんなが確かめ合う、それぞれの春と休日のしるし。幌をたたんだオープンカーのような、誇らし気で少しだけ気恥ずかしい優雅な午後のひととき。
夕暮れのスーパーマーケットでチェリストのM氏に思いがけずに会った。相変わらず艶やかで元気そう。そう言えばついこの間、同じスーパーマーケットでファッションデザイナーのK氏にばったり。パワースポットなのかな。外に出てみるものだと思う。今日は素晴らしい好天に恵まれて、晴れやかな一日だった。ぼくは昼の間アトリエにこもり、静かにしていた。ドラキュラの末裔のように。
助手Aのバースデイパーティーお茶会。誕生日の歌を歌い、本人の希望でアイスクリームケーキ。名前入りのバースデイプレートを付ける。幾本かのキャンドルに灯りを点し、願いを込めて吹き消す。「抱負は?」、「頑張らないこと!」。ふむふむ。お祝いの言葉と、皆からのプレゼントを受け取って満面の笑み。「家に帰ると洗濯物がたまってるんすよー、今日、着るもの貰ったからしなくてもいいかな」。そんな言葉が助手Aの喜びを表現する。洗濯はしようね。
昨日も今日もよく歩いた。歩くリズムが創造の基本。
たった一人でよいので、その一人が喜ぶ作品を創る。
雨の夜、Coolie’s Creekへ。清志郎さんの曲が流れ、穏やかな落ち着いたいい夜。皆がゆったりゆっくり時の間に間に漂う姿が嬉しく美しい。
Coolie’s Creek「天使アラカルト」展示作品の入れ換え。会期が再び延長となり嬉しい。より多くの人々にゆっくりと見て、感じてもらえる機会を得るのはありがたいことだ。特に巷間の敷居の高いギャラリーと違って、レストランという、訪れる人々の生活の延長としての空間なので、展覧作品のエッセンスが食事と共に供される。どのように消化吸収されるかは見る人の嗜好による。お好きなように味わって。
デザインはコミュニケーション。東京スカイツリーでの「言ノ葉の灯」文芸提灯展最終日、海外で学ぶデザイナー志望の女性とのデザインや美術教育をめぐる将来についての会話、あるいは母親と来場し、提灯に書かれた母親の詠んだ歌が、会場に来て初めて子供の頃の自分を詠んだ歌なことに気付いて、母親と提灯と共に記念写真を撮る女性の思い出話など、普段はなかなか会うことも話すこともない人との何気ないひととき、それぞれの携えて来た人生の得がたいひとこまがそこにある。デザインが何を伝えるかということ、伝えたいことのあるデザイン。だけど、デザインから何を受け取るかは限りなく自由がいい。
休養日。ネコたちといると時間を忘れる。ネコたちには時間の単位はなく、無償の愛があるだけ。