PICTURE DIARY 3001SA2016
参道に七味屋が店を張っている。
小柄で痩せた、ツルッとした親爺が
ガラスの入れ物の向こうにいる。
近付いて尋ねる。
「唐辛子は無しでどう?」
「唐辛子無しじゃ七味じゃねえなぁ」
「あんまり辛いのは止めておきたいんだけど」
「そんなに辛くねぇよ、唐辛子が入んないとダメだな、七味だから」
「ダメかな」
「少しだけ入れなよ、ほら、これくらい」
「えっ、多いな、その半分で」
「じゃ、これくらい」
親爺は小さじに3分の1くらい唐辛子をすくって見せる。
「わかった、じゃ、それで。あっ、胡麻多くして、あと山椒も」
「はい唐辛子これでね、胡麻多く、海苔、芥子の実、柚子、はい山椒も多く、あとアサの実ねっ!」
椀にすくったものをまぜ
「ほら、嗅いでみる?」
手渡された椀からいい香りが立つ。
小さな五百円の缶に詰めてもらう。
とても全部入る量ではないなと思ったが
椀に余った分をビニールに入れ
口を輪ゴムでぐるぐる結んで
おまけ、と言ってくれる。
ケチケチしない。
自分専用の七味。
「これ、気に入ったらまた来るよ」
「あー、またいつでもね」