PICTURE DIARY 1802TH2016
目黒雅敘園を最後に訪れたのは、新しい建物になる以前だったので、地下二階の駐車場に車を入れてエレベーターに乗り、一階で扉が開くと、ここは何処だ?と現実と過去の記憶の断崖に畏れにも似た戸惑いを覚える。アトリウムの中のカフェや茅葺きの料亭が、趣向を凝らした空間を構成して、他に無いもの、珍しいものを求めて、風呂屋の小僧から身を興し、この地に料亭を建てた創立者の心意気が感じられる。昭和初期の不景気な時代に、仕事の乏しくなった日本画や、伝統工芸の作家に声を掛けて積極的に登用し、料亭なので文字通り飯を食わせ、館の内部に絵を描かせ、工芸品やその技で飾らせ競わせた、古の日本美術界のパトロンの豪奢で豊かな意志が香るように漂う。今日では展覧会場になっている百段階段の、七つの部屋に集約されて残る往時の大家の仕事振りが、渋い光を吸い込むように放つ。ここで展覧するとしたら、さて、どうする。