PICTURE DIARY 1505TU2012


午後、水戸の料亭「とう粋庵」の主人でソムリエの上田氏に連れられて、鈴木茂兵衛商店の鈴木氏、東武百貨店の桜井氏の水戸組四人でワインのテイスティングへ。ワインの品定めと言うよりも並んだ120種のワインに品定められる。鈴木、桜井の両氏は酒がいける口。特に鈴木氏はテイスティングなので飲まないように、と言われても「あっ!飲んじゃった!」と言ってグラスを空にして笑わせてくれる。酒が強いのは羨ましいな。僕はアルコールの分解能力がかなり慎ましいので、テイスティングの、口に含み、試したワインを吐き出すことが当たり前の作法として許される環境は本当にありがたい。料理屋やレストランでは一度口に入れたものを出すような訳には行かないからね。出品されているワイン、シャンパーニュ、リキュールのリストを手に、気に入った銘柄の感想や特徴などを記しながら回る。中でもマデラワインが面白かった。ポルトガルのマデラ島で造られる甘口のワイン。大航海時代の大西洋航路、最後の寄港地として栄えた場所で、ワインを熱するのはご法度であるのだが、マデラ島で積み込んで約三ヶ月の航海を経て目的地に着き、樽から出したワインが偶然にも不思議な美味しさで熟成しているのを発見したのが発端となった。マデラ島は緯度で日本の長崎の辺りだが、航海自体はかなり赤道に近い所を通る旅となったようで、船倉はかなりの高温にさらされる。えも言えぬ芳香と味を有するその酒は、航海と同様の環境を再現する研究の結果、55℃で三ヶ月間、あるいは通常の地下のワイン蔵では無く、太陽に近い屋根裏の貯蔵庫で三年を経てマデラワインになる。もちろん屋根裏の三年物の方がまろやかで豊かだ。そんな55℃の三ヶ月物から1907年という年代物まで、10種類以上を解説していただきながら試飲したが、マデラワインの口当たりと独特の風味などや、それぞれの年代の物の個性が豊かで、100年以上前の景色や風物を年月のグラデーションをたどりながら、鮮やかに甦らせる力強い美しさを感じることが出来た。テイスティングに参加した、ただの飲み仲間のような僕らを赦されよ。マデラワインの薬草や、ともすれば紹興酒やブランデーにも似て、アルコール度数と糖度の高い甘口はやはり僕好みだ。他にはキリリとした甲州が良かった。

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