キーシン氏と待ち合わせてピアノをゆっくりと聴く。ただし、エフゲニー・キーシンが待ち合わせたのは僕以外に二千人以上もいて、キーシン氏はそれら全ての楽友たちに満遍なく最高の演奏を贈る。拍手鳴り止まずサントリーホールはスタンディングオベーション。カラヤンが若きキーシンのピアノに感涙し、楽屋を訪ね、母親に「息子さんは天才です」と言った逸話は有名だが、確かに天才だ。その天才を自身で裏付けてきた知性を感じる名演だった。
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