PICTURE DIARY 0907TH2015
近所の鶏肉屋で焼き立ての胸肉のローストを買い、そうだ、この先の和菓子屋で赤飯を、と足を延ばしたが休みだった。最近、このパターンに時々出会う。それではとさらに歩いて、玄米のおにぎりを買い求め遅い昼食とする。朝から鶏を食べたかったのと、だいぶ歩いたので心も体もお腹も喜ぶ。腹を満たすだけではなくて、本当に食べたいと感じるものを謹んでいただくこと。平安。
近所の鶏肉屋で焼き立ての胸肉のローストを買い、そうだ、この先の和菓子屋で赤飯を、と足を延ばしたが休みだった。最近、このパターンに時々出会う。それではとさらに歩いて、玄米のおにぎりを買い求め遅い昼食とする。朝から鶏を食べたかったのと、だいぶ歩いたので心も体もお腹も喜ぶ。腹を満たすだけではなくて、本当に食べたいと感じるものを謹んでいただくこと。平安。
ミック・イタヤ「中庭の鳩」展
2015年7月23日[木]-8月25日[火]
一般財団法人 田崎美術館
中庭にやって来る鳩を見守る静かな安らぎの時間は、僕らを平和な未来への入口へ案内する。扉の鍵はダイヤモンドのように透明な情熱で出来ている。ーミック・イタヤ
天使や女神、光と風や緑を愛するミック・イタヤが田崎美術館の一角で小さな展覧会を開きます。デッサンや切り絵などの小品を中心に30点余りの作品やプロダクツを展示いたします。
★関連プログラム★
ミック・アート・サロン/ティー アンド ワークショップ田崎美術館内のカフェで作品と景色を見ながら、お茶と小さな作品作りを楽しみましょう。
いろいろな材料を使って一緒に小さなポストカードサイズのコラージュ作品を作ります。
作品は額に入れてお持ち帰りいただけます。❶ 8月 8日[土]午後2時-4時
❷ 8月22日[土]午後2時-4時会 場:田崎美術館内カフェ
定 員:各回10名様/事前申込制・先着順とさせていただきます。
参加費:各回3000円/税込/ドリンク付/別途入館料が必要となります。
材料費:各回2000円/税込/額代込
参加方法:パワー・オブ・ビューティまでお電話でお申し込みください。電話03-3712-8521アート・サロン開催日以外のミック・イタヤの来館日は田崎美術館、またはミック・イタヤのオフィシャルサイトでご確認ください。 ★http://tasaki-museum.org/ ★www.micitaya.com
主催企画:株式会社パワー・オブ・ビューティ
後援:一般財団法人田崎美術館
お問い合わせ:田崎美術館 0267-45-1186
田崎美術館
〒389-0111 長野県北佐久郡軽井沢町大字長倉横吹2141-279
TEL 0267-45-1186
開館時間:午前10時-午後5時/水曜日休館
入館料:一般900円/高・大学生700円/小・中学生400円
30名様以上団体100円割引/障害者割引半額
半分な感じの日。予定していた仕事が半分出来た。昼食に出たが目当ての店が臨時休業だったので雨の散歩をする。食事と散歩、半分ずつの満足。ナッツ専門店を見付けるがそのまま通り過ぎる。案内によると、どうやらいろいろなフレーバーが付いているようだ。店の外からうかがっただけだが気持ちは半分店内に入る。立派な三脚に乗った大振りの絵の具箱が古道具屋に飾ってあるのだが、素材の合板が湿気でグニャリとやられている。そんな見かけにしてはかなりの値段なので手を出しも届きもしないが、湿気で合板の表面が剥離した様子が美から遠く、諦めがつく。半分残念。白シャツにグレーのハーフトーンのテストプリントがきれいに刷り上がって来てとても嬉しい。すべからく半分は良しとする。
七夕祭りの日は梅雨時でもあり雨のことが多い。織姫と彦星の逢瀬は雨の雲の上で。棟梁が雨樋を「とよ」と言うので、「とい」と言うのが「とよ」という風に訛って聞こえると思っていたが、どうしても気になって辞書を引くと「とよ」と言う言い方もあると知った。雅な語感である。毎日元気の出る話題や出来事とがっかりするような話題や出来事とが半々にある。一喜一憂流すべきは流して気に止めず。
作品に魂を込めようとするれば、時間をかけて両の手でいとおしむように作る。作品に命を吹き込もうとすれば、時間の長さは重要ではない。間合いが大切だ。
シンプルなかたち、すなおなアプローチ、オープンなそんざい、しぜんなクリエイション。偶然やいし。必然とさくい。鳥とたまご。リンガとにんぷ。円空とモノリス。タントラとえんばん。結晶体とおおばかもの。手捻茶碗とプロペラ。ひかりと風。音の入れ物と白磁。かたいもの、やわらかいもの、ふれられるもの、ふれられないもの、ひとのてとひとのあたまのかんぜんなふかんぜん。えいえんのやすらぎとあんしん。
凄い湿気、今年初めてサンルームの床の大理石がしっとりと濡れている。サンルームに置いたオランダ製の船旅用のトランクと室内の靴用クローゼットの位置を入れ換える。ツールドフランスが始まった。三週間の長いレース。オランダ、ユトレヒトからのスタート、ブルーナの街だ。飛行機嫌いでバイク好きのベルカンプがちらりとでも映らないかななどと妄想する。
昼に炭火で焼いた鰻肝の串焼と赤飯、美味しかったな。今日の打ち合わせで感じたこと、気の利いた仕事の出来る人は、意識せずとも気の利いたことをするものだ。荷物を出すのだが、まだ使える段ボール箱は使い回す。しかしそろそろ限界かという感じになったので、海外旅行の際に見付けて買い置いた荷造りテープや文字などを書き加えてそれとなくコラージュする。パッケージグラフィティのトランスポートバージョン。少しはチャーミングな見栄えになり、受け取る方も楽しいと感じて貰えるといいな。
来るものがあれば去るものもありそれが世の常。来るものは濾過し去るものは忘れる流儀。忘れたものが長い周期の彗星のように巡り来ることがあり、旅路の果てに、太陽風が彗星の核から放出する物質を輝く長い尾として棚引かせる。そうしてさらに太陽に近付くと、その熱で氷に覆われた核が分裂してばらばらになる。次に巡って来る時には彗星と認識されるものではないかも知れない。星屑たちは軌道を巡る。永遠に。忘れ去るべく去ったものはあたかも亡霊のようになる。もしもそれを生かそうとするのであれば尋常な力では及ばない、何か特別な物理や神秘の働きが不可欠になる。微弱でも、常に星としての煌めき放ち、見る者の讚美や憧れがあれば生命の宿る天体でいるが、一度完全に忘れ去られると昔の輝きはもう失われて、突然の彗星が登場のような訳にはいかない。幻を見ている。幻を現実にする力とは、情熱だけで充分だろうか。どんな占いや呪文が役立つだろうか。願いは届き叶うと信じて。
MIC*ITAYA POP UP「星くず蚤の市」
2015年7月7日 火曜日 ー 28日 火曜日
大阪のギャラリーDMOARTSにて、ミック・イタヤのポップアップ「星くず蚤の市」を開催中です。
定番の「MIRRORS」を中心に、イタヤデザインのKOTORIイヤホンや作品が楽しげに並んでいます。
この機会にぜひご覧ください。
DMO ARTS
大阪市北区梅田3-1-3 LUCUA 1100 B1F
電話 06-6450-8187
営業時間 10:00~21:00
http://www.dmoarts.com/news/2015/07/5000/
日本橋人形町へ行く。建物などはどんどん新しくなるが、人はというと話題が現在のことでも、その話し振りを聞いていると昔の東京や江戸を想像させる風情があり奇妙に安心する。大阪のDMO ARTSで「ミック・イタヤ星くず蚤の市」を開催する。展覧会というよりも、プロダクツやグッズの販売会のようなことになる様子だが、メインビジュアルになる絵を3〜4点ささっと描く。どれにするかは明日相談して決める。七夕の頃開催の予定。
人と土地の強い結び付き。人が自然を必要とするように、自然が人を必要とするか。
山羊のナナに頭突きの挨拶をされる。来るかな来るかなーと思ったら来た。僕もナナのことを忘れないし、ナナも僕のことを忘れない。
身体のメンテナンス。壊れた作品の補修。
気圧と湿気の影響で身体がこの上なく重く怠い。コンディションに合う生活を選ぶ。仕事や食事や行動の全てを軽めにする。とにかくよく眠ること、ねこたちに学べ。昨日、浅葉克己さんの「ストライプコケシ」や仲條正義さんのデザインした「黒猫のサイドテーブル」、「こけしのハナコ」、「セーヌを行くプティバドゥ」を見た。秋田の漆や日本の工芸を活かしたそれぞれのユーモアある作品完成度の高さは唯一無二。浅葉さん仲條さん節。更に仲條さんの独特なコラージュを木版画に起こした作品はぜひコレクションしたいと思わせた。良いものに触れると気持ちが高揚する分、身体が安定を求める。
育ちはそれぞれの宝だ。水戸で生まれ育って良かった。僕の両親は僕が生まれたとき上品に育てようと話し合ったと聞いた。田舎とも言い難く都会とも言い難い城下町。のびのびとおおらかでざっくばらんな頑固者の水戸っぽ気質。どちらでもなくどちらでもある頑固と自由。故郷というのは自分自身そのものだ。そう言えば、「ミックさんのミックって、水戸光國のミックなんですか?」と訊ねられたことがあったのを思い出した。
チェロの音色は人の声に似ている。チェロの音なのか人の声なのか、どちらか解らない二つの音色が気持ち良く混ざり合うような音楽、そういうものを聴きたい。
日常を織り成す何気ない出来事。宇宙や神々から色々な方法と方向で啓示を受ける。素直に応え素直に進む。
30年来の旧交を暖める。デビューアルバムからのお付き合いのグループが、30周年記念のベスト盤を出す。まず初期の何枚かの作品から選曲して。DVDになっていなかった同時期のミュージックビデオもカップリングしてパッケージする。改めてアルバムを並べて眺めてみると、一枚一枚の個性と時代が時を超えてそこにある。全てのアルバムをずっとデザイン出来るという約束があった訳ではないので、その都度これが最後と思い全力を尽くした結果。今見れば素晴らしいところも至らないところもある。精一杯グループのテーマやその音に対する理解と解釈がなされている。重奏低音のように全アルバムを貫く芯がある。未来へのサウンドとビジュアルとしてベスト盤を成立させる。
夏至。昼が一番長く、夜が一番短い。世界の各地で夏至を祝う祭がある。豊穣を願うものが多い。古来、太陽や月や星の運行を眺めて生活して来た祖先には、年のうち太陽の一番の盛りになる今日は、ことさら特別な日であるだろう。何気なく過ごす一日の意味は、昔と今とでは違う。何が違うのかは人それぞれに違う。
行きたくても行くことの出来ない催しは多い。するべき務めのある仕事を優先するのでやむを得ない。その場の空気や状態を想像して気持ちを送る。気持ちをかたちや証しで示せることばかりではないので、成功や盛況をただただ祈り願う。そのような思いを作品に表す。自分がその場に居合わせる賑やかを微かでもここに残す。その場のリアリティーとこの場のリアリティー。本来人の思いに時間や空間は関係がない。
日本の伝統工芸への取り組み方について思う。先の大戦後のこの国の文化について思う。自分が学校で受けた教育というものについて思う。
なぜ日本に生まれてどんな役割があるのかなとたまに考える。訳が知りたいとか思い出したいとかではなくて、充分に人の役に立っているかどうか判らなくなることがあるからだ。夢中になると見えなくなる聞こえなくなる。人の役に立とうといつも意識してはいないので、ふと我に返るとこれでよかったのかなと思うことが多々ある。充分な自分でいることがいつでも充分に人のためになることを信じている。自分を見失うことがありはしても自分を探す旅は毎日のことだから、たまに誰かが迷子の僕を見つけ出してくれたり、いつの間に迷子になっていたのかと驚くことや楽しいことはこれも多々ある。よく判らないことはよく知ることの何倍もたくさんあるので考えていてもつかめない。立ち上がって動こう。
夜、groovisionsの展覧会オープニングレセプションへ。終了間際に滑り込み。展覧会の会場まで、久し振りに表参道を歩くが、昼と違って夜の方が落ち着きがあり、僕の良く知っている原宿表参道の印象が現れ嬉しくなる。昔からある建物は本当に少なくなって、新しい記憶を作る機会は大切にしたい。今夜はセーフ。
夏、軽井沢の田崎美術館の一角で、小さな展覧会を開こうと思う。風や光や緑を感じる場所で、ささやかな。浅間山が狼煙のような噴煙をたなびかせて招いている。数年前に同じ美術館で展覧会をした時には、浅間山を愛し、多くの名画を描いた、今は亡き田崎廣助画伯と浅間山に敬意を示し、BEAT BEASTと名付けた彫刻作品を製作して想いを拙いながらも形に残した。僕たちは、この星と宇宙に、より謙虚な気持ちとたゆまぬ感謝を表すべきだと思っている。その気持ちは変わらず、今するべきだと感じたことを素直にしたい。
裸足の脚で砂を踏みしめて歩く。
馴染みの蕎麦屋へ行く。大分ご無沙汰していた。蕎麦の禁断症状が出るところ。ここのところの仕事のペースとタイミングが馴染みの蕎麦屋、うどん屋に行くを許さず。うどん屋の昼は、蕎麦屋より早いので道は遠い。うどんの禁断症状も出るところ。月曜日はあれやこれやの連絡で一日の仕事が終わる。おまけに連絡を取り切れない先もいくつかあり、明日は終日外出の予定であれば、更に明後日に廻すことにする。これもまた苦々しくも楽しげな仕事の禁断症状の日々。
食後、ソファに横になり少し眠る。ヘアサロンを経営する古くからの知人夫妻が、木製の大きなハイヒールのガーデンチェアとテーブルのセットで、英国風にお茶を飲みくつろいでいる。奥方は「オリーブの日記」と言うタイトルのエッセイを執筆している。僕らが入って行くと、ちょっと迷惑そうな表情をして見せる。知人夫妻のサロンの、繁華街の奥まったエスニックな匂いのする小さな広場のようなカフェで、ステージを務めた後の興奮を鎮めながら、KK氏に一緒にステージに立った記念にお椀を被せたようなメダルを差し出されたが、知人夫妻に献上した。KK氏が明るい笑顔でまた今度君に渡す機会があるよ、と言う。沢山の扇風機が積み上げたアンプの背後で回るそのエキセントリックなステージ。憧れのDBと一緒だ。
ただ喜びのために絵を描く。
いつも自由でいたいと思うので、決めごと、約束ごとを増やしたくないと考えていた。けれど、決めごと約束ごとがあればこその自由でもある。そんなことは知りつつも、やっとこの頃それらの調和に気持ちが向くようになった。自分が信じて来たこと、何となくして来たことを天日干しする。
薔薇園で薔薇の花を見て廻る。何十種類も見た中で印象的だったもの三種。England’s Rose、見事な奥行きのある明るくノーブルな少しピンク系の赤。典型的な英国を代表する薔薇という意味の命名なのか。花壇の中央に咲き、近付くことが出来なかったのでどのような香りか確かめられず。Queen of Sweden、淡いクリームイエロー。花の中央部の花弁の密度が見事。全体から高貴な空気を漂わせる。小さめの葉が丸く明るめの緑。花全体の形状もどこから見ても丸い印象。甘い香り。Miss Alice、淡いピンクのグラデーション。大きめの花にワイルドな香り。上品さよりも見た目の可憐な表情よりも、それ以上にお転婆な感じ。薔薇の一輪一輪が全て違う顔をして思い思いの方向を向いている。薔薇園に吹く風が、薔薇の香りを運ぶが、その魅力的な香りを充分に感じようと、大きく息を吸い込むと、ただ風の匂いがするだけ。何気なく吹く風に乗った、何気ない薔薇の香り。微かに感じるか感じないか判らない程のささやかな楽しみ。
9月の六甲アートフェスティバルに工作展OBANDOSが招かれているのだが、広い会場内にオルゴールミュージアムがあり、そのショップで工作展OBANDOSのオリジナルオルゴールを製作して販売することになった。オルゴールの仕組みは、僕の作ったオリジナル楽器GALIN/ガリンに似ているので、ミックがデザインすると面白いのでは、と推されてお鉢が回って来た。面白い、確かに面白いが、どのようにオルゴールとOBANDOSサウンドの接点を見極めるかセンスが問われるところ。優しいオルゴールの音色でうっとりしたいけどOBANDOSはノイズ系のサウンドだし、ノイズのオルゴールではただ壊れている不良品てな感じになるだけかも知れない。はてさて。
OBANDOS、DANBALL BATのCD発売記念ライブにゲスト出演。もう1つのゲストバンドSISTER PAULとLAST WALZで。30分の演奏。
自分は、自分が自分の自分を自分に自分で自分と自分だ、のように自分中心の考えをする。皆は、皆が皆の皆を皆に皆で皆と皆だ、のように皆中心の考えをする。あなたは、あなたがあなたのあなたをあなたにあなたであなたとあなただのように、あなた中心の考えをする。自然は、自然が自然の自然を自然に自然で自然と自然だのように、自然中心の考えをする。それでいい。
ヒカリエBEAMS LIGHTSのMIC*ITAYA POPUP STORE EVENT最終日。閉店後搬出。お世話になりました、ありがとう!またEVENT出来るといいな。来場し、参加してくれた皆には、その場で描いた小さなスケッチ作品を、宝物です、大切にしますと言って持ち帰っていただいたように、僕と皆の間に生まれた笑顔や感謝の気持ちが、何より代えがたく尊い。
街に出てぐるりと見回したら、感じる全てのことは人工的なこと。森に入りぐるりと見回したら、感じる全てのことは自然のもの。絵や作品の自然について考える。共に生きる、活かすことを考える。
プライベートアートサロン。今のところ生徒は1人。ミラーズのディスプレイプランやブランディングについてミーティング。より端的に美しく。
道具に支配されるな。
新宿の方面に行く用件が出来、B GALLERYで開催中の絵画保存修復家、岩井希久子さんの展覧会を見に行く。絵画修復師の展覧会は珍しい。一昨年程前からキュレーターの藤木洋介氏に少しだけ話は聞いていたが、なるほど興味深い展覧だ。絵画の保存と修復の作業は病気を治す治療と同様だと言い、人類の文化遺産を後世に伝える役割を地道に探究もしている。どのように修復するべきか迷いのあるうちは、絶対仕事に取りかからないと言う。展覧会場で映写される修復作業や息遣いの伝わる映像を見ていると、静かな、それでいて毅然とした激しさを秘めた情熱が伝わって来る。作品に込められた作者の精神や意志に寄り添って、その何かを感じ、理解しながら作業は進められる。日本の絵画保存修復の現実は、欧米に比して大分立ち遅れていると言う。専門の教育機関さえ無いのだから。岩井さんのような優れた人物がいらっしゃるのを知ると同時に、絵画保存修復にまつわる材料や技術、現実と未来について、表現する側もより知識を深める必要がある、そして応援する必要がある。美
の永遠のために。
画材屋へ。スケッチブックやクロッキー帳、クレヨン、アクリル絵具、筆、パレットなどを見て廻る。物がたくさんある場所では、物に呼ばれるように見て歩く。こちらが探して見付けるのではなく、あちらに見付けて貰えるようにする。今日は特に気に止まる物もなく、何も買わずに出る。行き付けの自転車屋に行く。修理に出していた自転車が出来たと知らせがあったのが先週で、やっと取りに。細かい所まで丁寧に手を入れてくれている。プロフェッショナルの仕事に触れると自然な微笑みが生まれる。つくづく素晴らしい人と出会っているなぁと思う。
このままの流れの中から工夫して新しい世界を創る。考え方や行為にほんの少しの角度を付けるだけで世界は変わる。ぼんやりした景色のどこか一ヶ所に視点を定めると全体が見える。全体がくっきりし過ぎた景色をぼんやり眺めると本質を感じる。それぞれの個性や特性に応じて対処の方法はまちまちだが、変わらないのは気持ちが通るかということ。立ち木のように自然にしていてもぶつかって来るものは多いので、折れた枝や散った葉のことは気にしないこと。ぶつかって来るものにも理由があり、やむを得ないことと知る。木がそこに立っていれば、ぶつかるしかなかったのだから。怪我の無いように受け止める。水や空気の流れは止めることの出来ない自然なもの。濁らないようにする。
午前中、代官山ティーンズ・クリエイティブに絵を持って行く。ソランジュのシリーズ描き下ろし「白と黒のソランジュ音楽」。子供たちやスタッフの皆を見守るように願いを込めて。12時、正午より開館のイベント。長谷部渋谷区長の挨拶、茂木健一郎氏の記念講演。脳の活性化について、リアルに体感することになる。講演の中で初めて会う人同士のつながりかた、コミュニケーションのあり方を体験し感じる。無邪気でやんちゃな、それでいて人々に良い印象を持たせる子供の行動と気持ち。真っ直ぐな心。時間が無かったので茂木さんの講演、と言うかパフォーマンスが終了した会半ばで失礼したが、代官山ティーンズ・クリエイティブ館長の桑原紀佐子さんも桑原茂一さんも、溌剌としていた。
朝9時、友人の9才になる若きご令嬢にアートスクール個人教授。才能の豊かさに舌を巻きつつ軽い昼食。午後、渋谷ヒカリエ、BEAMS LIGHTS with MIC*ITAYA POPUP STORE EVENT盛況。夕刻、代官山AL GALLERY、シンドウミツオ写真展オープニング。ミュージシャンを撮ったたくさんの素晴らしい写真の数々に嬉しくなる。こんなに撮っていたのか、と笑いながら絶句。エントランス右側の大ガラスに、シンドウさんご本人が毛筆で書いた、欧文の展覧会タイトル越しの会場内風景がシンドウデザインのメッセージ。
3週続けて金曜日の片付け。これから毎週金曜日は整理整頓の日にするか。本当にこまごまと不要なものはあるものだ。
身体を点検すると、怠けのツボがこそばゆい。怠けている訳ではなくて、どうやら少しピントがずれている、あるいは、デッサンが狂った状態だ。姿勢を正す。
ラワン材の合板に絵を描く。ソランジュの連作にする。今日も暑い一日だった。一枚の絵を描くために整えた一日。もっと描きたい。
自転車で出掛けたけれど、暑い暑い。大汗をかくほどではなかったが、たっぷりと夏の予感がする太陽だ。代官山ティーンズ・クリエイティブ、31日の開館に向けて準備が急ピッチで進んでいる。今日初めて見学をさせていただいたが、ほんのり心暖まる空間に、子供たちが集まって絵を描いたり音楽に親しむ姿を想像すると、自然に笑顔になる。茂一さんのコレクションをお借りしたレコードやCDのリスニングルームなどは、子供たちのみならず、大人たちにとっても宝の山だ。講師やワークショップ、フォローするスタッフは、それぞれの道のプロフェッショナルなので、子供たちと交わることで生まれる未来は、参加する誰にとっても計り知れない価値を潜ませている。微力だが力を貸す。
一日気怠く、何をするにしても気力を振り絞らないと体が動こうとしない。何かしら原因が有るのだろうと思い、気圧配置や天気のこと、昨日今日の食事や飲み物のこと、少し大きな地震があったことなど考えたり思い返したりするが、原因としてどうもしっくりと馴染まない。仕事に身が入らず、やっとの思いでミーティングをしてぐったりする。朝の体操も出来ず、夕方になってからゆっくりとやった。そうしながらうすうす気付いて夜になってはっきりとしたこと。原因は昨日の靖っちゃんのコンサート。サキソフォンと言う金属の筒に息を吹き込み、木製箱形の巨大なピラミッド内部のようなオペラシティコンサートホールに共鳴させたバッハは、どうやら僕の脳の中心から尻尾の先まで揉みほぐしてくれた。崇高な、そしてバッハの洒落の効いた音楽は、清水靖晃と言う稀有なメディアを得て眠りから醒め、聴衆を新たな眠りに誘う。靖っちゃんの「GOLDBERG」確かに凄い。
東京オペラシティ、清水靖晃とサキソフォネッツ「GOLDBERG」公演。バッハのゴルドベルグ変奏曲を全曲サキソフォンとコントラバスに編曲演奏。靖っちゃんの音楽遍歴、才能、センスが凝縮して、アカデミックで茶目っ気のある新しいゴルドベルグを聴いた。音像から、充分に未来映像的な印象を得て、心から楽しい。不眠症の伯爵がバッハに直訴して作曲を願い、夜毎、弟子のゴルドベルグが変奏して聴かせ、伯爵を眠りに誘ったと言う逸話がなるほどと思える。靖っちゃんの音楽魂はかなりの部分がロックなので、子守唄のようにすんなりと優しく眠らせてくれない。しかし、例えようの無いまどろみをくれる。多くの友人知人が来場し、讃えた。
夢の中で、絵を描く友がポスターの仕事をしたので見て欲しいと、郵便で送ってくれた。2枚平たい状態で送ってくれたポスターは、ジョン・レノンとオノ・ヨーコの展覧会のB全判サイズの変型で、正方形に近いプロポーションだった。特殊な茶色の綺羅引きの光沢を持つ洋紙に、墨一色の線画で中央付近に小さく描かれている。一見目立たず控え目だが強く速い速度感が定着している。ジョン・レノンは丸い眼鏡だけで表現されて、その下に裸で横たわるオノ・ヨーコが肘を立てた手に頭を乗せている。その二人の間に挟まれる構図で、丸眼鏡と裸の両の乳房に呼応した相似形で丸い二つの目玉が描いてある。友の画風ではなく意外だったが、洒落ていて、こんな素敵な仕事をしたのかと、とても嬉しかった。