PICTURE DIARY 1808MO2014

PD20140818s
ヘアサロンの窓辺に鼻のオブジェが置いてある。いつからかは覚えていないが、ヘアサロンが今の場所に越して来た、16年前から既にあったような気がする。サルバドール・ダリのデザインした鼻と唇の香水瓶があるが、多分そのパーツか何か、関連したものを飾っているのだと思っていた。ヘアサロンの椅子の正面は鏡で、その左手の窓辺の視界の中に、鼻はいつもこちらを向いて置かれている。その端正な磨りガラスの鼻。「その鼻、確かダリの香水瓶の鼻だよね」、「違いますよ」。えっ!違うのか。「じゃ、何?」。鏡に写るヘアサロンのU氏がしてやったりの笑顔を見せている。「ミックさん、今さらそんなこと聞きますか、さあ、何でしょうねー」。ちょっと意地悪くにこにこしている。「何かに使うためのものなの?」。「はい!使いますねー」。鼻のオブジェの訳を尋ねられたのは久し振りだと言いながら、U氏は俄然楽しそうだ。その鼻を何に使うと言うのか全くわからない。鼻毛を切るのに使うのか、いや、美容院で鼻毛なんて。客の鼻を直接つまむ訳にはいかないので、そんなとき鼻に乗せて顔を右に向けたり左に向けたりさせるのか。待てよ、毛染めなどで匂いのきつい薬剤を使うような時に、鼻に被せて防ごうとするものか。U氏は相変わらず愉快そうに笑っている。「ミックさん、目を閉じていてください、絶対開けちゃだめですよ!」。何かガサゴソする物音。「はい!開けてくださーい!」。鼻には眼鏡が掛かっていた。眼鏡を掛けた客には当たり前のオブジェ。微妙に知らないことの多かりしこの世界。

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