PICTURE DIARY 0808WE2012
2004年の展覧会で「PEACE DOVE」平和の鳩をモチーフにした作品を製作した。一羽の鳩をペンダントトップやリング、バングルなどのアクセサリーやテキスタイルの作品として、シルクスクリーンプリントやキャンバスにも描いた。鳩の形をした鏡を連作し壁面を飾った。公園の手入れされた芝生の上を、何かついばみながら歩く一羽の鳩とその平和な景色。ベンチに座る一人の男が棒切れを拾い上げ、近付いて来た鳩に投げつけて追い払う。鳩の平和は危うい。19世紀頃まではアメリカ五大湖辺りに生息した「旅行鳩」は、その渡りの季節になると三日三晩の間空を埋め尽くすほどの大群が移動したと言う。そんなにたくさん居た鳩が絶滅するとは、誰が想像しただろうか。食用や羽布団用に乱獲されて、1890年代に入るとその姿はほとんど見られなくなり、ようやく保護されるようになった時にはすでに遅く、1906年にハンターに撃ち落とされたのを最後に野性の旅行鳩は姿を消した。オハイオ州のシンシナティ動物園で飼育されていた雌のマーサは動物園で生まれ、檻の中で一生を過ごし、1914年に亡くなった。そして旅行鳩はいなくなってしまった。平和は尊く、危ういものだ。世界中の街角や公園の、いつでもぼくらの身近に生きる鳩たちは、ぼくらを自由と愛に満ちた世界へと導く平和の使いだ。鳩に餌をやるなと立札があるにしても。あるいは鳩よけの仕掛があるにしても。