PICTURE DIARY 0806FR2012


ピアニストとピアノの間にはそれぞれに強い個性の結び付きがあって観るたびに新しい発見をする。エフゲニ・ポジャノフのピアノは乱暴に一言で表せば、鍵盤が熱い。灼熱の鍵盤を必要最低限のタッチでさまそうとするような風に見える。熱くて仕方が無いので、しかもピアノを弾きたいので。背骨から腰の、そして両肩の力が自然に抜けている印象。東洋武術の格闘家や整体師の自然体の構えにも似ている。ステージに出て来て弾き始める前に、左手をそっとピアノに乗せて一礼する。無造作に見える礼だが、ピアノと言う無二の親友、数々のコンサートホールで出会うピアノと言う分身、あるいは初対面のピアノに対する親しみと敬愛を込めた仕草が印象に残る所作の一つだ。弾き始めれば、どの曲も自身に充ちた独自の解釈がなされて、迷いなどあり得ない。YAMAHAのコンサートグランドが良く響く。3曲のアンコール曲の最後に、ポロネーズ英雄を弾いた。今夜のプログラムを締めくくるこの曲に、エフゲニ・ポジャノフのメッセージを聴いた。レクイエムなどでは無く、今必要な音楽をポジャノフならではの想いで届けたと思われる。ステージから楽屋へつながる出入り口のドアを通る時など、手をぶつけたりしないようにと、当たり前に両手をかばう動作が日常生活の一端を見せてくれたりもした。本当に将来が楽しみなピアニストだ。演奏曲目は以下に。
ショパン、舟歌 嬰へ短調 op.60
ショパン、ピアノ・ソナタ第3番 ロ短調 op.58 第1楽章Allegro maestoso 第2楽章Scherzo:Molto vivace 第3楽章Largo 第4楽章Finale:Presto ma non tanto
シューベルト、12のドイツ舞曲/レントラー op.790
ドビュッシー、レントより遅く/ワルツ
ドビュッシー、喜びの島
スクリャービン、ワルツ 変イ長調 op.38
リスト、メフィスト・ワルツ第1番「村の居酒屋での踊り」 S.514
アンコール
ショパン、華麗なる大円舞曲
シューベルト、リスト/編曲 セレナーデ
ショパン、英雄ポロネーズ

Leave a Reply