PICTURE DIARY 3003FR2012
世界最古の洞窟壁画シュベールのドキュメンタリー映画を見る。3万2千年前に描かれたという壁画はフランスのロアール川沿いの洞窟で1994年に発見された。すごい筆力であることは画面を通してでも伝わる。実際に見れば圧倒されるだろう。何のために描いたのだろうか。ライオン、クマ、マンモス、シカなど、人は一人だけ描かれており、女性の下半身とバイソンが一体になったような構図で天井から下がる鍾乳石にぐるりと描かれている。古代人は洞窟の焚き火の炎を背にして壁面に映る自身の影を見ただろう。そして壁面に描かれた動物たちと猟の踊りを踊ったかも知れない。ある地域で現在も壁画を描く人々の話として「なぜ、絵を描くのか」という研究者の問いに、描く人は「私は絵を描いてない」と答えたと言う。なぜなら絵は精霊が描くのだと。シュベールの洞窟壁画には「動き」の要素、表現がなされている。足が八本描かれていたり、輪郭線が複数だったりと。そして小さな苗も見付かっている。想像すると洞窟の全体が劇場の様だ。壁から壁へと動物達が動きを持って連なっている。洞窟内を進むにつれて舞台の場面が変わるように。一体何頭描かれているのか、一番奥には30頭程のライオンの群れが描かれていると言う。ここでは、踊り、祈り、奏で、歌い、描く。それらが一体となって奉られたのではなかろうか。洞窟入口付近の赤い手形はその祭事とでもいう集まりの回数かとも思う。ひょっとしたら落款のような。古代人の力と力強い暮らし向き、現代からでは想像も出来ない、信じることもできないような自然と一体となったその力を、その脳が働きかけていたのではないか。今では霊能と言うような。一人一人の一年を3万2千人分集めてそのパラレルワールドを一本につなぐ。