東京はこの冬初めて零度以下。僕はこの冬初めて牡蠣南蛮蕎麦。行き逢う人と、寒くなりましたねぇ、という挨拶がすんなりと身に染みて交わされる。この間まで泣き虫だった空が、今はきりりと晴れやかに、生真面目な顔をして、冬枯れてゆく街並みを暖かくする。心まで乾かないようにと、美しい一筋の涙を贈り物にして、午後の太陽は西へと向かう。速度を早めて、山並のベッドに潜り込み早寝を決め込む。
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